全人的認知リハビリテーションにおいては, 患者のみならず家族やスタッフ間で協働して, 患者の最終ゴールに向けて最大限の支援が行われる。Wilson や Evans らが Oliver Zangwill センターで全人的神経心理学的リハビリテーションを行うにあたって, 治療的環境, 理解の共有, 有意義で機能的な目的指向性の活動, 代償戦略学習とスキル維持, 心理学的介入, 家族や介護者との協働という 6 つの中核要素に従って展開している。本稿では, この6 つの中核要素を中心に置いた全人的認知リハビリテーションについて, OZC の理念を元に筆者が立ち上げたグループリハを受療した社会行動障害が顕著であった頭部外傷例と母親の内省の変化を交えながら考察した。
グループリハビリテーションは, 遂行機能を高めることを目的とし, 15 回を 1 クールとして年に 2 回施行した。内容は, 障害に関する勉強会, Activity, 調理実習, 問題解決訓練, 仕事体験シミュレーション, 家族会, 小旅行などで, 課題遂行に当たって, 各自目標を決めまたその遂行を毎回振り返った。
本症例はグループリハの経過の中で, 重度の症状を示しながらも内省が変化し, 乖離した内省と行動が, 他者をモニタリングすることや他者の意見に傾聴しながら, また遂行を振り返りながら改善し, また家族とも折り合いがついていった。
全人的認知リハビリテーションにおいては, 対象者と家族およびスタッフが, いかに協働して意味のある活動や戦略, 心理学的介入を用いていくのかを症例を通して具体的に述べた。
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