高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム I : 発達障害と神経心理学
自閉スペクトラム症の嗅覚特性
熊崎 博一
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2016 年 36 巻 2 号 p. 214-218

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抄録

  嗅覚機能は, 危険認識, 生殖活動の誘発をはじめ多岐にわたりそのいずれもが生命を営むにあたり重要な機能となっている。アルツハイマー型認知症や統合失調症では予後の予測因子として嗅覚は注目を集めている。自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder: ASD) においてもDSM-5 (American Psychiatric Association 2013) において, 嗅覚をはじめとした感覚の問題が診断基準に取り上げられた。 現在までの質問紙を用いた嗅覚研究では, 質問紙を用いた感覚スコアと自閉症の程度との間に相関関係があることがわかっている。臨床場面において認めるASD 児の嗅覚特性は社会機能との関係が示唆される。 一方で自叙伝では嗅覚に関する記述は少なく, 生理的な指標を用いた嗅覚検査の結果も一貫したものとはなっておらず課題も多い。嗅覚特性を把握し, 支援を行うことでASD 者の大幅なQOL 改善につながる可能性があり今後の研究が待たれる。

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© 2016 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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