高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム II : 古典的症例の今日的意味
Liepmann から始まる失行
近藤 正樹
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2017 年 37 巻 3 号 p. 253-259

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抄録

  古典症例を振り返ることは, 症候がまとめられた時の経緯を理解し, 症候の本質をとらえ直すことにつながる。特に失行研究では依然として controversial な問題が残されており, 失行研究の嚆矢である Liepmann の最初の報告例 (第一例) の内容を知り, 彼の考えを振り返ることは重要と考える。
  本稿では, まず Liepmann の背景について述べ, 次いで第一例の紹介と考察を記載し, その後の Liepmann の報告と失行論を補足した。最後に第一例の問題点 (あるいは問題提起) について述べた。Liepmann の失行論から顧みて, 第一例は, 右手の失行, 多彩な動作の障害の全てが失行によるものでない, 失語の合併の 3 点で実は特殊例であったのではないかと考えた。
  失行研究は Liepmann が報告した局所脳損傷だけでなく変性疾患を含めた領域まで広がっており, 原点に戻って失行の症候を見直していくことも必要と思われる。

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© 2017 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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