2017 年 37 巻 4 号 p. 366-371
大脳や脊髄障害など四肢の欠損を伴わない患者にみられる幻肢を余剰幻肢と呼ぶ。余剰幻肢は, 脳血管障害ではこれまで比較的稀と報告されてきた。今回, 筆者らは, 右被殻出血により重度麻痺を呈した左上肢に余剰幻肢を生じた 40 代男性例を経験した。余剰幻肢は, 麻痺肢を他動的に動かされても出現しないが, 本人の動かそうとする意図と共に, 他者により他動的に動かされると出現するという, 稀な特徴を認めた。本例の病態機序については, 線条体-視床-皮質回路において運動前野皮質の機能は保持されているが, 視床からの求心性感覚情報が遮断されているために, 企図された運動のイメージと実際の運動のミスマッチが矯正できず, 運動企図による余剰幻肢が誘発されたものと推測する。