高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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特別講演
音声と表情が伝えるもの : コミュニケーション信号の進化
岡ノ谷 一夫
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2018 年 38 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

  人間と動物の認知的断絶を生物学的につなぐ仮説を紹介する。人間の言語と感情は, 他の動物には見られない詳細なコミュニケーション信号である。これらはどのように進化してきたのか。情動を表出する信号としての音声が複雑化し, 状況のカテゴリー化を可能にする言語に至る道筋を, 前適応という考えで説明する。さらに, 言語の表出と対になる顔表情との表出について, それが正直な信号として言語内容を保証するものであるという仮説を説明する。最後に, 言語が正直な信号の支えを得られなくなった時, 人間のコミュニケーションシステムが崩壊する危険もあることを指摘する。電子デバイスの発展は, そのような危険をもたらす可能性を持つ。

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© 2018 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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