高次脳機能障害の領域においても, 科学技術の進歩に伴い, さまざまな新たな知見が蓄積されてきた。それでも, 障害を通して理解される人の脳の仕組み, 心の動きについては常に未知の部分が残る領域と考えられる。この未知の部分に対して, 障害のある人々のために最善となることを追求し, その方略をあくまでも科学的に検討することが臨床研究活動ということになる。
そのために, 対象となる障害だけでなく, 自己を知り, 他職種を知り, 先輩後輩を知ること, 障害のある人を知ること, それを通して互いの知識を共有すること, 互いを理解することは重要な課題である。この課題は臨床的な学術研究活動を通し, 時系列の中でもまた空間の中でも広げ, つないでいくことが求められる。その過程を通し, 人と人とのつながりができる。この貴重な人と人とのつながりこそ, 「わかりあう」の基盤をなし, 「わかりあうを科学する」という臨床研究活動はそのうえに成り立つと思われる。
抄録全体を表示