2018 年 38 巻 2 号 p. 139-146
社会的コミュニケーションの障害など自閉スペクトラム症中核症状に対する治療方法は確立出来ていないのが現状である。本稿ではオキシトシン経鼻投与の効果を臨床評価に加えて, マルチモダリティ脳画像解析による脳機能変化として検出した医師主導臨床試験による, この中核症状治療薬の開発過程を紹介する。治療開始前の遺伝子情報による治療効果予測の可能性を示す研究成果も含めた。こうした本邦発の研究成果が活用され, 出来る限り早く自閉スペクトラム症当事者のために新規治療薬の臨床応用が実現することが望まれる一方で, 臨床的に意義の高い効果についての確認, 最適な用量や用法の設定, 特に幼少児期における長期投与の安全性など, オキシトシンを自閉スペクトラム症中核症状の治療薬として実用化するためにはまだ検討するべき点が多く残されている。そのため, こうした検討事項を踏まえてデザインした医師主導治験を含めた研究計画について, 現在進行形で実施している。