急激な高齢化の進展に伴い, わが国の認知症者とその予備軍である軽度認知障害 (mild cognitive impairment : MCI) の人は, それぞれ 500 万人を超えたといわれており, 認知症を地域で支える様々な試みが自治体や地域包括支援センター, 医師会などを中心として展開されつつある。国も 2015 年に認知症施策推進総合戦略 (新オレンジプラン) を策定し, 様々な認知症施策を展開しているが, その基本的な考え方は, 「認知症の人の意思が尊重され, できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことである。そのためには, 適時適切な介入により住み慣れた環境における日常生活活動 (ADL) の維持と安全の確保が前提となる。独居や夫婦のみの高齢者世帯の増加に伴い地域で孤立する初期認知症や MCI 段階の高齢者, 既存のサービスに馴染みにくい若年性認知症者のコミュニティーにおける生活支援は, 喫緊の課題である。MCI や全ての認知症に共通したリスクファクターである身体的不活発や精神的不活発に対する介入に加えて, 原因疾患別の介入が重要であり, そこにこそ本学会の会員のような認知症の原因疾患や疾患別の症候学に精通した多職種チームによるアウトリーチ機能が重要と思われる。