2019 年 39 巻 3 号 p. 263-272
症例研究に焦点をあて, 3 ケースを取り上げ, 神経心理症状の分析とリハビリテーションの観点から包括的に検討した。その治療介入成績から神経心理学的リハビリテーションにおける症例研究の意義について検討した。失行症例の症例 1 では, 古典的な症例研究の方法に従った症状を質的に検討し新たなエラー分類を作成した。概念失行の症例 2 は, 認知神経心理学的モデルに基づき, 意味知識の障害という, 障害の性質を明確化し, 意味知識を与えることで動作・行為の改善が可能となった。Bálint 症候群および Gesrtmann 症候群の症例 3 は, 臨床精神医学の方法に基づく生活上の問題点について, 障害の解明を行い, 日常生活動作の障害の多くの原因となっていた, 位置や方向の障害という症状の核に対して介入し, 改善を認めた。このようにケース分析法を用いることは, 生活を含めた症例に対する包括的支援を可能にすると考えられた。