高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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特別企画 2 : とっておきの蔵出し症例
クロイツフェルド・ヤコブ病により自己身体部位失認および着衣障害を呈した一例~身体表象の検査法をめぐって~
田村 至濱田 晋輔相馬 広之武井 麻子森若 文雄
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2020 年 40 巻 3 号 p. 280-287

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抄録

  身体部位の呼称および他者身体部位の定位は良好だが, 自己身体部位の定位に障害がみられる自己身体部位失認および着衣障害を呈した症例 N.A. を報告した。身体部位失認は, 出現率が低く, その検査法も様々である。本論は, 自己および他者身体部位の定位にかかわる検査法について報告例と自験例を比較検討し, 身体部位失認のメカニズムを明らかにするための有効な検査法について検討した。さらに N.A. における着衣障害と自己身体部位失認を呈することなく着衣障害がみられた対照症例 Y.O. を比較した結果, メンタルローテーションの障害に起因する Y.O. の着衣障害と異なり, N.A. の特異的着衣障害として, 自己身体の形態認知障害に起因する上着の形態認知障害の可能性が考えられた。N.A. の自己身体部位失認と着衣障害の主な原因は, 自己身体の形態やサイズにかかわる身体表象の障害と推測され, 障害の核心を評価できる新しい検査法の必要性が考えられた。

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© 2020 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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