2020 年 40 巻 3 号 p. 338-347
頭頂弁蓋部を含む病巣に伴い体性感覚障害を呈した, 2 症例を報告した。2 例とも基本的体性感覚が重度に障害されていたが, 皮質性体性感覚のうち立体幾何図形, 手触り素材, 日用物品の同定についてチャンスレベル以上に正しく反応し, 体性感覚の階層的なモデルに合致しなかった。また, 日常生活で不便を感じないほどに巧緻動作が行え, 体性感覚障害が運動制御を障害するという考え方に反していた。うち 1 例では, 皮質性の体性感覚の実感が全くないのにもかかわらず, これらの課題に正しく反応していることがうかがわれた。これらの現象の機序を, 触覚情報処理の 2 つの流れや第二体性感覚皮質の機能に関する理論に基づいて考察した。