2020 年 40 巻 3 号 p. 385-392
小児の視知覚分析の評価には, 立方体透視図模写 (NCC) が使用されるが, 描画特徴を質的側面から検討した報告は少ない。本研究では読み書き習得度の低い児童を対象に NCC の定性的採点による学年到達度と, 最初に面を構成するか否かの描画過程が視知覚分析を測る指標になるのか検討した。学年到達度を基準とした「基準到達群」と「基準未到達群」, 面構成の有無を基準とした「面構成あり群」と「面構成なし群」で線画同定課題の成績を基準ごとに比較した。その結果, 基準到達群と基準未到達群の間で有意差を認めなかったが, 面構成なし群は面構成あり群に比べ初発反応時間が有意に長かった。線画同定課題は視知覚分析を測ると考えられるが, 面構成の有無により線画同定課題で相違を認めたことから, 面構成なし群は視知覚分析の脆弱性を示唆し, NCC は描画過程を考慮することで視知覚分析の指標になると考えられた。