左半球損傷者 (LHD) 10 名, 右半球損傷者 (RHD) 10 名, 健常者 10 名を対象に, 左右半球損傷者の情動喚起効果の違いによる表情の特徴を検討した。情動喚起効果が低い刺激として静止画, 高い刺激として情動的話題による会話を行った。静止画は International Affective Picture Systems (IAPS) を使用し, 各刺激に対する好悪判断を行った。表情評価は顔面解剖学に基づいた客観的評価システムである Facial Action Coding System (FACS) を用いた。IAPS 条件において 3 群間で好悪判断の分布に有意差はなかった。表情表出の総数は, IAPS 条件では RHD 群は LHD 群および健常群に比べ少ないが, 会話条件は 3 群間で有意な差はなかった。RHD の表情表出は刺激の情動喚起効果に影響を受けることが考えられ, FACS によって損傷半球別の表情特徴を初めて明らかにした。