脳損傷により高次脳機能障害を呈した場合, 認知能力とともに, 意思決定能力も低下すると考えられている。意思決定能力とは, 自分の意思を伝えることができること, 関連する情報を理解していること, 選択した理由に合理性があることとされており, 医療同意能力や判断能力を包含する。しかし, 意思決定能力を定量・客観的に測定する指標は未だなく, 意思決定支援の定式化には及んでいない。したがって, 多職種による合意形成や, 質問方法の工夫といった支援者側のスキルが求められることになる。
本稿では, 高次脳機能障害者の医療と福祉における意思決定支援に関して, それぞれの立場におけるポイントを概説し, これまで行ってきた研究の一部を紹介する。