2021 年 41 巻 2 号 p. 219-226
左中心後回後上部の転移性脳腫瘍に伴い, 右手でつかんだものを放せなくなる症状を呈した症例を報告した。症状は, 持つ対象やつかむときの手の形, 使用する指のいかんに関わらず生じた。また, 放すという行為にしか生じなかった。右手には運動拙劣と道具を正しく持てない症状があったが, 麻痺はなく, 複雑な指の動きも可能だった。把握反射や本能性把握反応もみられなかった。つかんだものを放せない症状が把握反射や本能性把握反応から独立して, また頭頂葉損傷により起こりうることが示唆された。