高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム : 多言語話者の失語症
発達障害と多言語使用
田宮 聡
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2022 年 42 巻 3 号 p. 277-281

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抄録

  自閉症スペクトラム障害 (ASD) と多言語使用に関して以下の 3 点を取り上げる。
  ①多言語環境は ASD 児の言語発達に悪影響を及ぼさないか?
  ② ASD 児が多言語を習得することは可能か?
  ③子どもの言語発達の問題は多言語環境の影響か? 障害か?
  ①と②についてはカナダの研究を紹介する。この研究では, ASD 児 75 名 (平均年齢 4 歳半) を, モノリンガル群, 同時バイリンガル群, 継起バイリンガル群に分けてその言語発達について検討した結果, 3 群間に有意差は認められなかった。現在では, 多言語環境は ASD 児の言語発達に悪影響を及ぼすことはなく, ASD 児が多言語を習得することは可能と考えられている。
  ③については, 多言語使用児の言語発達を評価する際には, 多言語使用にみられる特徴を念頭に置く必要があることを症例 A 子を通じて示す。A 子は, 英語が使用される海外の地域で育った。コミュニケーションの困難さのために 7 歳時に児童精神科を受診したが, A 子の言語発達の問題は多言語環境によるものではなく, ASD によるものと考えられた。

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© 2022 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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