多言語話者の定義は日常生活で 2 つ以上の言葉を話す人と範囲が広く, 多言語話者の失語の回復は, 多次元的に複数の要因が, 相互に影響して, さまざまな回復パターンを生じることが明らかになっている。 多言語話者の失語の回復に関与する要因として, 主に回復の法則や発症前の言語の状態, 発症前に使用していた言語モダリティの違い, 発症後の病変部位の大きさや重症度の違い, 言語間の言語学的類似性, 発症後の言語治療を含む言語環境の影響, 言語のスイッチ機構の障害, 言語機能の半球側性化の違いなどが挙げられている。特に, 発症前の言語の状態が果たす役割は強く, 加えて, 二言語間の言語学的類似性が高いほど, 言語機能の局在は重複し, 並行的に回復しやすいことが明らかになっている。また, 言語機能の半球側性化は, 交叉性失語の報告例から右半球の関与が指摘されてきた。しかし, 早期バイリンガルでは2 つの言語とも両側半球に側性化し, 後期バイリンガルでは, モノリンガルと同様に, 2 つの言語とも左半球優位であることが示されている。
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