2022 年 42 巻 3 号 p. 321-325
覚醒下手術は, 脳内に染み込むようにして発育するグリオーマと呼ばれる脳腫瘍や, 薬でどうしても抑えられないような発作で困っているてんかんの症例に行われ, 成果をあげています。日本では世界に先駆けて覚醒下手術のガイドラインが策定され, 一定の条件を満たした施設を認定する制度が発足し, 健康保険の仕組みのなかに組み込まれるまでになり, 現在普及が進んでいます。覚醒下手術は, 脳機能のなかでも特に, 言語を含む高次脳機能を守る手術です。患者一人ひとりの社会背景や人生を考えて, 機能の温存と病変の切除の両立を目指して頑張る取り組みである一方, ここで得られる所見は, 高次脳機能に関するかけがえのない本物の情報でもあります。また, 脳神経外科医だけでなく, 評価者として脳神経内科医・言語聴覚士・作業療法士など多職種の連携が欠かせません。本稿は, そんな多職種の方々が, このやりがいのある手術に興味をもつきっかけになれば幸いです。