高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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ワークショップ : 謎解き実践講座
神経症候の二重性─陰性症候と陽性症候─
鈴木 匡子
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2022 年 42 巻 3 号 p. 331-335

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抄録

  Hughlings Jackson の重要な考え方の 1 つである陰性症候と陽性症候について, 類似の用語との違いを含めて概説する。神経系は階層構造をもち, ある階層が障害されると, その層の機能は消失または減退し, それまでできていたことができなくなる (陰性症候) 。一方, 壊れた階層より下の階層の機能は上からの抑制が外れるために過剰に発現し, それまでみられなかった現象が生じる (陽性症候) 。このように脳損傷により陰性症候と陽性症候の両者が現れることを神経症候の二重性と呼ぶ。陰性症候と陽性症候を分けて考えること, その背後にある神経系の階層構造のダイナミックな変化を意識することは, 高次脳機能障害の複雑な症候を理解するのに役立つと考えられる。

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© 2022 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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