ナムセンスとは, 患者が体性感覚刺激に対して偶然を超えた高い確率で正しく反応することができるにもかかわらず, 同じ刺激を意識的に知覚することができない現象である。従来のナムセンスは, 触覚と触点定位との乖離という視点で議論されてきた。近年我々は, 触れた物体にナムセンスが生じる症例を報告した。患者は左頭頂葉梗塞後, 体性感覚刺激の大部分を認識することができなかったが, 形, 肌理, 物品に関する刺激を偶然を超えた高い確率で正しく選択することができた。失行報告と本例のナムセンスについて, 特徴と考えられる病態機序を解説した。