パーキンソン病 (以下, PD) では, 高頻度で多様な視知覚障害を認める。視覚的な異常は, 生活の質を低下させると指摘されており, 複視, 錯視, false sense of presence, passage hallucinations などは, 認知症の重要な危険因子とされる。疫学研究, 光干渉断層撮影解析, 脳内ネットワーク解析, incomplete letters や隠し絵課題をはじめとするタスク下の機能的 MRI 解析などを通じ, 視覚処理に関連する網膜や瞳孔を調節する自律神経系をはじめとする末梢レベルから, 視覚ネットワーク, 腹側および背側注意ネットワーク, デフォルトモードネットワーク, 辺縁系ネットワークなど視覚情報を統合する高次レベルに及ぶまで, 病期に応じて複数の病変が多様な病態に関与している可能性があることが判明している。また, 視知覚の異常は, 認知症発症の予測因子としても注目されている。PD では早期から視知覚障害を認めうることを認識し, 適切に評価するとともに, さらに病態を解明し, より良い対応方法や予防法を開発していく必要がある。
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