2024 年 44 巻 2 号 p. 147-151
人は空間を介してのみ外界を認識できる。本稿では, 空間にかかわる動作の症候として半側空間無視と着衣障害を取り上げた。半側空間無視は空間の方向性注意, 空間認識の意識にかかわる症候であるが, heterogeneous な病態である。主体となる症候の要因により関係する脳内ネットワークが異なることが明らかになってきている。着衣障害 (着衣失行) は衣服と身体, つまり外空間と身体空間の認識から動作への変換に基づく症候と考えられる。その基盤となる病態機序について, 古くは Marie らの planotopokinesia, Brain の visual disorientation, 他に構成障害, mental rotation など諸説あるがいまだ明らかになっていない。これらの症候は右半球を中心とする神経基盤と関係し, 空間に基づいた反応あるいは動作の障害としてとらえられる。しかしながら, 空間認識と身体, 動作の関係性からの理解が必要である。