高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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教育講演:認知機能に対する温泉効果
認知症と温泉療法
前田 眞治
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2025 年 45 巻 2 号 p. 110-117

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要旨

認知症に対して温熱刺激の有効性がフィンランド式サウナで報告された。報告では2,315人の健常男性の前向きコホート研究で,週1回のサウナ浴に比べ,週2~3回で22%,4~7日で66%認知症のリスクが低減したと報告された。この報告では温熱による血管内皮機能の改善や血管新生の増加,炎症軽減などと関連し脳血流の低下が予防されたと考察している。また,温熱によるタウ蛋白の過剰なリン酸化の減少も報告されている。日本の入浴頻度の記載のある65歳以上の10,147人を対象にした前向きコホート研究でも,0~1回/週より7回/週以上の入浴者において認知症の発生頻度が少ないことが報告されている。温泉浴もサウナ浴も体温が38.5℃以上に上昇することが共通してみられ,この熱刺激により細胞監視機構のNK細胞活性や蛋白質管理修復を行うヒートショックプロテインなどが増え防御メカニズムが駆使される。温泉浴は体温上昇による熱刺激防御機構が亢進することで認知症に伴う異常な蛋白質の増加沈着が抑制できると考えている。

Abstract

The effectiveness of thermal stimulation against dementia has been reported in Finnish saunas. In a prospective study of 2,315 healthy men, the risk of dementia was reduced by 22% by sauna bathing 2-3 times a week and 66% by sauna bathing 4-7 days a week compared to sauna bathing once a week. It is considered that the heat improves endothelial function, increases angiogenesis, and reduces inflammation, preventing a decrease in cerebral blood flow. It has also been reported that heat reduces the excessive phosphorylation of tau protein, which is associated with dementia. A cohort study of 10,147 healthy people aged 65 years or older in Japan, who had bathing frequency recorded, also reported that the incidence of dementia was lower in those who bathed 7 times or more per week than those who bathed 0-1 times per week. Both hot springs and saunas have a body temperature rise of 38.5℃ or more, and this heat stimulation increases the NK cell activity, which are cell surveillance mechanism, and heat shock proteins, which manage and repair proteins, and defense mechanisms are activated. It is considered that hot springs bathing can suppress the increase and deposition of abnormal proteins associated with dementia by enhancing the heat stimulation defense mechanism due to the increase in body temperature.

Ⅰ. 温泉の心理的効果

温泉に入ると気分が落ち着き,攻撃性,徘徊,睡眠障害が改善するという日本の報告(Deguchiら 1999)や,フランスでは温泉地療養を行うと,本人が落ち着き,家族・介護者の負担が軽減するという報告がある(Roquesら 2014)。

科学的立証として,リラックスすると少なくなる心理的ストレス物質(唾液腺クロモグラニンA)の変化をみると,水道水浴が95%であるのに比較し0.1%塩化物泉浴が88%と有意に低下しており(P<0.04),温泉のほうがリラックスしていると考えられる(前田ら 2020)。しかし,心理的に落ち着いて,興奮などの症状は軽減されるが,認知症自体への直接の効果は立証が難しいと思われる。

Ⅱ. 認知症に関連した温泉の研究報告

温熱は前頭前野の血流が増えるので認知症にはよいと光トポグラフィーで確認した報告(小峰ら 2014)や,40℃30分の温熱療法で脳波・脳電位パワー(NAT),ADL,MMSEが改善した報告(小峰ら 2015),炭酸泉連浴は脳血流が増加すると脳血流シンチグラフィーで研究した報告(Maedaら 1997),アルツハイマー病は発症早期から入浴回数が減り,うつ状態は入浴回数が減ると増悪するとした報告(岩崎ら 2012)などが散見される。

Ⅲ. サウナ浴の認知症に対する温熱効果の調査研究

2017年に,フィンランド式サウナ(フィンランド式乾熱高温サウナ,室温90~120℃,湿度10~20%)が認知症に効果があると報告された(Laukkanenら 2017)。

42~60歳のサウナの入浴回数がわかっている健常男性2,315人を対象に前向きコホート研究を行った。1984~1989年をベースラインとし,フィンランドの個人識別コードを利用してフィンランド全国の病院で欠落なしの全例調査を行っている。2007年までの間に(平均追跡期間20.7年),認知症とアルツハイマー病になった人を調査した結果,認知症204例とアルツハイマー病123例が診断されている。

入浴頻度との詳細な検討の結果,週4~7回のサウナ浴と,週1回のサウナ浴の被験者とを比較した場合,認知症のリスクが66%(ハザード比:0.34),アルツハイマー病のリスクが65%(ハザード比:0.35)減少したことが認められた(表1)(Laukkanenら 2017)。フィンランドの中年男性のサウナ浴は認知症やアルツハイマー病の発生と逆相関し,中頻度から高頻度のサウナ浴が認知症やアルツハイマー病のリスク低下と関連していた。Laukkanenら(2017)の報告では,そのメカニズムは不明であるが,サウナ浴と記憶疾患を結びつける潜在的なメカニズムを確立すべきと提言している。

表1    サウナ入浴頻度別の認知症とアルツハイマー病のハザード比


多因子調整は,潜在的な交絡因子として,年齢,BMI,収縮期血圧,LDLコレステロール,喫煙,アルコール摂取,心筋梗塞の既往,2型糖尿病,安静時心拍数である。

(Laukkanen T, Kunutsor S, Kauhanen J, Laukkanen JA. Sauna bathing is inversely associated with dementia and Alzheimer’s disease in middle-aged Finnish men. Age Ageing. 2017;46:245-249. doi:10.1093/ageing/afw212を引用,筆者訳)

また,Heinonenら(2018)は,認知症とアルツハイマー病のリスクに対するフィンランドのサウナ浴の効果をレビューし,認知症に関連する要因として血管内皮細胞および微小血管機能の改善,血圧および動脈硬化の低下,血管新生の増加などを挙げている。さらに,Kunutsorら(2023)は頻繁なサウナ浴は,血圧降下,抗炎症,抗酸化,細胞保護,ストレス軽減の特性,および神経内分泌,循環,心血管,免疫機能への相乗効果に関連するとしている。これらの効果は,日本の温泉の主に温熱効果とされる「温泉の一般的適応症(筋肉・関節の痛み・こわばり,冷え性,末梢循環障害,軽症高血圧,耐糖能異常,自律神経不安定症,ストレスによる諸症状,疲労回復,健康増進)」と一致する。

Ⅳ. 温泉の認知症に対する効果検証

1. 2006年の調査

富山県の人口約10,000人のJ町の40歳以上の住民全員6,117人中5,812人[男性2,469人(61.9±13.0歳),女性3,115人(62.7±13.3歳)]を対象に,2001年4月~2004年3月の間に温泉を利用した人を温泉利用頻度少(年1回以下)と利用頻度多(年2回以上)群に分けて比較した研究がある(鏡森ら 2006)。その間に新たな認知症発症が108人あった。両群でP<0.2,オッズ比0.69(95%CI:0.32~1.40)であり,差はなかったとしている。しかしこの研究は温泉利用頻度の設定が年1回かそれ以上ということであまり差が出ない可能性があると考えられる。

2. 日本における認知症の前向きコホート研究

その後,日本の高齢者における浴槽入浴頻度と認知症の関係をみた報告がある(Yanagiら 2020)。この調査では入浴頻度を明確に分け週7回以上の浴槽高頻度入浴群と週0~1回の低頻度入浴群を比較している。65歳以上54,539人に郵送でアンケート調査を行い,2010年から6年間,浴槽入浴頻度の記載のある10,147人を対象とした。その間1,004人(9.9%)に認知症の発症が認められている(表2)。浴槽入浴が週1回以下の低頻度入浴のハザード比を1.00とした場合に,週7回以上の高頻度入浴のほうが冬の入浴頻度の多い群で0.70,夏で0.72となり高頻度入浴で認知症発生が少ないという結果であった。

表2    日本における認知症の前向きコホート研究


(Yanagi N, Yagi A, Hayasaka S, Ojima T. The Association between tub-bathing frequency and the risk of dementia among older people in Japan:JAGES Cohort Study. J Jan Soc Balneol Climatol Phys Med. 2020;83:26. doi:10.11390/onki.83_1.22を元に筆者作成)

Ⅴ. 認知症と温熱効果の基礎的研究

温熱効果がアルツハイマー病にどのように作用するかマウスを使った研究がある(Guisleら 2022)。この研究はタウ蛋白を多く産生するマウスでマイルドな高体温の状態が蛋白質を変化させるかを調べた実験である。アルツハイマー病では,タウ蛋白の過剰リン酸化と凝集が臨床進行と相関しており,タウ蛋白へのアプローチが有効な治療ターゲットとなっている。

実験では,室温23℃で直腸温37.5℃であったタウ蛋白を多く産生するマウスに,42℃45分のマイルドな温熱負荷を行ったところ直腸温39.1℃となった。この前後のアルツハイマー病に関連する脳内蛋白質を対照群(室温での38.2℃,温熱負荷後の直腸温40.1℃)と比較している。

アルツハイマー病にみられる神経原線維変化はタウ蛋白質が高度にリン酸化されることにより発症するとされており,Guisleら(2022)はその脱リン酸化を測定している。その結果,異常リン酸化タウ細胞を認識する蛋白質AT8,リン酸化タウ細胞に対する抗体であるCP13,リン酸化タウ細胞に対する抗体のPHF1がいずれも対照群に比較して低下しており,脱リン酸化が生じ,温熱負荷が認知症に関連する蛋白質を減らすという結果が認められている。また海馬での蛋白質も同様な変化であることもみいだされている。このように基礎的な研究においても,温熱が認知症に関連する蛋白質の変化をもたらし,認知症を軽減する可能性があることを示唆している。

Ⅵ. 温泉による体温上昇効果

温泉の主なる効果は,入浴による体温上昇が大きいことにあり,水道水に比較して早い体温上昇がみられることである。さらにその上昇した体温が長く保温され,温熱効果が強いことが特徴である。温泉の泉質には食塩泉,重曹泉,炭酸泉などがあるが泉質を問わず多くの温泉で体温上昇が認められる(図1)。また,温泉のほうが水道水より出浴後も体温が高く保温効果が続いていることがわかる(前田 2021)。

図1    泉質別の温泉による早期体温上昇と保温効果

水道水に比較し体温の早期上昇も保温効果も温泉のほうが強い。温泉全身浴では41℃15分で38.0~38.5℃程度まで容易に体温上昇し,加温負荷刺激状態に達する。

人間は恒温動物であり,一定の体温でもっとも効率よく酵素が働き細胞活動などが保たれる。入浴などで体外から温熱が加わると,その部位の細胞の温度が上昇し活動できなくなる。そこで血管を拡張して循環をよくし,まだ温まっていないほかの場所にある血液をその部位に送り込み,熱をほかの部位に運ぶことで呼気や汗などで上昇した体温を拡散し体温を下げる。この血管拡張により温泉から加わった熱は全身に運ばれ体温が上昇する。この血管拡張の多くは温泉による体温上昇に反応し,血管内皮からNO(一酸化窒素)が分泌され,血管内皮の外側にある平滑筋を収縮させ血管の外側へ血管内皮が引っ張られる。しかし,硫黄泉では血管内皮からのK(カリウム)の遊離があり炭酸泉ではプロスタグランディンE2という血管拡張物質を介した血管拡張もあり,温度上昇とは異なるメカニズムで血管拡張する泉質もある。いずれにせよ血管拡張により血流がよくなり,温泉からの温熱エネルギーが体温を早期に上げることは同様である。

Ⅶ. サウナによる体温上昇効果

フィンランド式サウナは室温90~120℃・湿度10~20%以下の乾熱の気体による体温上昇効果をきたす温熱刺激空間であり,温泉浴と同じような体温上昇効果がみられ,実験では100℃のサウナ浴を10分間2~3回で,体温は38.5℃程度まで上昇する(図2)(Siquier-Collら 2023)。

図2    サウナ浴による体温上昇

100℃10分,22℃室外冷却を2~3回繰り返すことで,体温は38.0~38.5℃以上まで上昇し,加温刺激域に達する。

(Siquier-Coll J, Bartolomé I, Pérez-Quintero M, Toro-Román V, Grijota FJ, Maynar-Mariño M. Heart rate and body temperature evolution in an interval program of passive heat acclimation at high temperatures(100±2℃)in a Sauna. Int J Environ Res Public Health. 2023;20:2082. doi:10.3390/ijerph20032082を引用,筆者訳)

Ⅷ. 体温上昇による人間の反応

人間の体温は通常36.5~37.5℃程度に維持されているが,上昇すると,38.0℃くらいで通常の風邪のように疲労感が生じ,39.0℃くらいでインフルエンザのように通常の活動が制限され,40.0℃では熱中症,41.0℃以上では短時間で死に至るようになる。このように人間は熱に非常に敏感で,体温が上昇すればさまざまな異常がもたらされる。

どの程度の温度であれば細胞が生存できるかという研究がある(Deweyら 1977)。この研究は湯に浸かっている時間と生き残っている細胞数をみたものである。42.0℃程度まではほとんど問題ないが42.5℃を超えると急激に細胞数が減少することがわかり,42.5℃以上は細胞にとって致死的な温度であることがわかる。したがってこの温度が人体に対しては異常環境になることがわかる。つまり42.0℃以上の温泉は血液凝固能の著明な亢進がみられる温度であり,血液凝固能に関連するplasuminogen-activator-inhibitor-1(PAI-1)の活性(Tamuraら 1996)や血小板凝固能の活性化がみられ血液凝固能が亢進する(Kurabayashiら 1997)。42.0℃に近づけば,このような異常な現象がみられるが,38.0℃程度の体温上昇でも刺激を感じ,人体にはさまざまな反応がみられる。その反応として異常な細胞などを排除する免疫機構の亢進と,異常な蛋白質の早期発見ならびにその修復・排除がなされることが知られている。

1. 異常細胞監視・排除機能の向上

人間にとって熱は異常環境による刺激であるが,体温上昇が2.0℃以内程度の適度な刺激であれば細胞は死滅せずに生き残ることができる。その際,次に種々の刺激が来ても生き残れるように,構え防御するストレス防御機構がある。これらには異物認識力・細胞監視機構(免疫力)を高めたり,生体防御能力を高めたりする反応がある。

その1つにnatural killer(NK)細胞活性(細胞監視機構に関与)がある。NK細胞はおもに血液中に存在し,リンパ球に含まれる免疫細胞の1つで,生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えているため「ナチュラルキラー細胞」と呼ばれている。

NK細胞は人間の体内を幅広く行動し,がん細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見すると,攻撃を仕掛ける。これが活性化すれば,異常細胞監視・排除機能が増強していると考えられている。

温泉の入浴刺激によってNK細胞は,温泉浴1~2日後に有意な活性化が認められる(図3)。

図3    温泉浴後のNK細胞活性の変化

炭酸泉(右),塩化物泉(左)でも同様に温泉浴によってNK細胞活性が亢進する。

2. 蛋白質監視・修理・排除機構の亢進

さらに,入浴によって蛋白質修復力が向上するメカニズムがある。これはヒートショックプロテイン(heat shock proteins:HSP)の温熱による誘導である。

HSPはハエの温熱負荷により発見された生体内ストレス蛋白で,なかでも分子量70 kDaのHSP70は,平常状態の細胞内に広く分布する蛋白質で,人体のHSPのなかでもっとも多く,蛋白質の輸送と品質管理,不要になった蛋白質の分解など,蛋白質の一生にわたり面倒をみつづけているストレス蛋白である。このHSP70は,温熱,虚血などの種々のストレスによって誘導され,蛋白質の変性の抑制や,変性した蛋白の修復を行う。HSPは細胞に広く存在する機能であり,さらにストレスによって引き起こされるほかの蛋白質の変性にも対応する。その特徴は,①発現は自然界で起こりうる,②すべての種がHSP遺伝子を持っている,③HSP発現はストレス耐性と相関関係がある,④自然に受けるストレスのレベルと相関関係がある,などである(Federら 1999)。

このHSP70が温熱効果の高い入浴などの温熱刺激後に産生されれば,種々の異常な蛋白質が修復される。HSP70が増えて認知症などで生じる異常な蛋白質や細胞の監視排除がなされるとすれば,認知症改善への効果につながる。

温泉浴などの温熱負荷環境でのHSP70の増加を測定した結果を図4に示す。図にみられるように温泉浴ではHSP70が水道水浴に比較しても有意に増加し,蛋白質の監視・修理・排除機構が亢進することがわかる。

図4    温泉浴後のHSP70の変化

炭酸泉(右),塩化物泉(左)でも同様に温泉浴によって水道水に比較しても有意に増加することが認められる。

Ⅸ. 温泉浴などの温熱負荷と認知症の関係

以上のNK細胞活性やHSP70は人間が異常と感じられる体温上昇が必要であり,HSP70であれば体温が37.0℃台ではあまり増えず。38.0℃を超えたところで増えることがわかっている。また,顕著な高体温では熱中症などによる細胞障害性の変化が生じることから,適度な刺激になるのは38.0~38.5℃程度の体温上昇と考えられる。

図2にみられるように100℃のサウナ浴を10分間2~3回で体温は38.0℃を超え,これがフィンランドの調査でみられた認知症発生の抑制につながった可能性があると考えられる。

また温泉浴でも図1にみられるように41℃15分程度の全身浴で体温は38.0~38.5℃程度に上昇し,この体温上昇がフィンランド式サウナ浴と同等の認知症発症を抑制したのではないかと考えている。

欧米人にはシャワー浴で身体の清潔を保つ習慣はあるが,身体を温めるために浴槽に入るような入浴の習慣はほとんどない。日本人の温泉入浴をはじめとする入浴習慣は浴槽に張った湯に肩まで浸かり,ゆっくりと身体を温めると,血行が改善し副交感神経系も優位になり心身ともにリラックスする。「体を温める」ために「温浴」するのは,日本独特の文化である。温泉は源泉数が27,932ヵ所(2022年3月)あり,日本各地で利用できる。温熱資源として利用できる施設を整えさえすれば,いつでも大量の熱源を得られる有用な資源である。温泉入浴好きの日本国民にとって,利用しやすい天然資源である。

温泉入浴は体温を1.0~2.0℃程度上昇させ,38.0~38.5℃程度のマイルドな加温環境をつくる。このような体温上昇が人体にとってよい温熱刺激と考えられる。これは熱刺激による生体反応であり温泉でもサウナでも同じと考えられる。温泉入浴好きの日本人の文化が,認知症予防につながるとすれば,欧米に先駆けて,認知症抑制の手段を実践していることになると思われる。

まとめ

人間は一定の体温でもっとも効率よく活動できる動物であるが,体温が一定の温度を超えると,また元に戻そうとする働きが生じる。このとき血管が拡張して副交感神経系が優位になり,心理的なリラックス感などを得られることでも認知症状が軽減する。同時に38.0~38.5℃程度のマイルドな体温上昇は刺激ともなり,異常な細胞を認識する細胞監視機構の活性化や異常な蛋白質を修復・排除するメカニズムが出現し,認知症で出現する蛋白質や抗体などの不活化が認知症の発生・増悪を阻害し予防できると推測される。このことは日本人の好む温泉入浴やサウナ浴が認知症の予防につながり,認知症医療に貢献できると考えている。

COI

著者に本論文に関連し,開示すべきCOI状態にある企業,組織,団体はいずれもありません。

謝辞

本報告に際し,温泉に関連する演題の機会を与えていただいた福井俊哉大会長ならびに温泉研究を指導していただいた故 福井圀彦先生に深謝いたします。

文献
 
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