アテローム血栓性脳梗塞後に,誤認対象のみならず「誤認を訴える対象」の選択性を認めたフレゴリ症候群の1例を報告する。症例は70歳代前半の男性で,頭部MRIにて右前頭葉背外側皮質下~腹外側皮質・弁蓋部,右島皮質・皮質下,右中心後回,右頭頂葉,右側頭葉上~中部,右被殻に至る広範な病変を認めた。言語機能や近時記憶,相貌認知に低下を認めなかった。本例は,病院内での特定の言語聴覚士を特定の知人として,病室内での特定のベッド位置の他患者を兄と誤認した。その後,妄想性誤認の自発的な訴えが認められなくなった時期を経て,特定の言語聴覚士との1対1の場面でのみ,妄想性誤認の自発的な訴えが再び出現した。本例の経過から「人物を誤認すること」と「人物の誤認を訴えること」は必ずしも一致せず,乖離する場合があること,そして,その乖離は周囲のかかわり方の差異によって生じうることが示唆された。