高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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45 巻, 3 号
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原著
  • ―音響分析による発話特徴の評価―
    兒玉 成博, 畑添 涼, 橋本 幸成, 今富 摂子, 高倉 祐樹, 小谷 優平, 宮﨑 彰子
    2025 年45 巻3 号 p. 118-127
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/07/08
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    原発性進行性発語失行(PPAOS)1例の発話特徴を客観的に評価したので報告する。症例は,神経心理学的所見から認知機能,前頭葉機能,言語機能および音韻意識が比較的保たれていたが,発話速度の低下およびアクセントパターンの変動といったプロソディの異常を認めた。2音節の連続構音,母音の持続発声,10単語を復唱,音読,呼称別に各3回反復させ録音し,音響分析を行った。結果,/aka/の破裂音から声帯振動が始まるまでの有声開始時間の変動性評価では,PPAOSがコントロール群に比べて有意に変動した。また,単語から得られたPPAOSの音読,呼称における発話所要時間がコントロール群より有意に延長した。本研究の指標は,PPAOSの早期診断における補助的な情報として有用である可能性がある。

  • 竹内 奈緒子, 春原 則子, 新貝 尚子, 角田 翔, 福田 明
    2025 年45 巻3 号 p. 128-139
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/07/31
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    もやもや病患者のバイパス術前後の神経心理学的検査と生活の変化,術前からリハビリテーションセラピストが介入する意義を検討した。対象は47例,手術前後で神経心理学的検査と手術後に術前後の自覚症状・心境・生活の変化についてアンケートを実施した。その結果,digit span順唱以外の検査で術前に比べて術後に成績が上昇し,特にTMT-J Part BとRCPMの向上は有意であったが,効果量は小さかった。術後に自覚症状が改善したり不安が減少したりした例が多かったが,悪化した例もいた。術後86%が復職,うち33%は時短勤務などで,37%は自覚症状残存のまま復職した。セラピストに対しては退院後の生活の注意点や予想される困難についての説明が期待されていた。以上から,自覚症状の悪化・残存が不安の増加につながること,復職には職場の理解を含めた環境調整が必要であることが示唆された。セラピストには検査を行うだけでなく,術後に生じた高次脳機能障害に対する訓練を行い,患者が必要とする情報を詳細に説明する役割と環境調整を含めた指導が求められていると考えられる。

  • 谷口 亜里紗, 高倉 祐樹, 杉山 卓弥
    2025 年45 巻3 号 p. 140-150
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/08/22
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    アテローム血栓性脳梗塞後に,誤認対象のみならず「誤認を訴える対象」の選択性を認めたフレゴリ症候群の1例を報告する。症例は70歳代前半の男性で,頭部MRIにて右前頭葉背外側皮質下~腹外側皮質・弁蓋部,右島皮質・皮質下,右中心後回,右頭頂葉,右側頭葉上~中部,右被殻に至る広範な病変を認めた。言語機能や近時記憶,相貌認知に低下を認めなかった。本例は,病院内での特定の言語聴覚士を特定の知人として,病室内での特定のベッド位置の他患者を兄と誤認した。その後,妄想性誤認の自発的な訴えが認められなくなった時期を経て,特定の言語聴覚士との1対1の場面でのみ,妄想性誤認の自発的な訴えが再び出現した。本例の経過から「人物を誤認すること」と「人物の誤認を訴えること」は必ずしも一致せず,乖離する場合があること,そして,その乖離は周囲のかかわり方の差異によって生じうることが示唆された。

  • 立場 文音, 橋本 幸成, 岡﨑 孝広
    2025 年45 巻3 号 p. 151-158
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/08/22
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    【背景】片麻痺憎悪における麻痺肢への憎悪感情や自傷行為の生起条件ならびに経時的変化については十分に検討されていない。【方法】右半球損傷1例に対し,発症4日目から30日間,1日4回の頻度で①麻痺肢の非所属感②麻痺肢の他人帰属感③麻痺肢に対する憎悪感情・自傷行為に関する質問評価を行った。【結果】本例は麻痺肢を自己と認識した際に憎悪感情を抱き,自傷を行ったと回答した。一方で,麻痺肢を内縁の妻と認識した際には自傷をしなかったと回答した。憎悪感情や自傷行為と,非所属感や他人帰属感といった身体パラフレニア症状の経過は一致しなかった。【考察】本研究の新規性は,片麻痺憎悪の症状を自己報告による行動データを用いて経時的に検討した点にある。本例の憎悪感情は,麻痺肢を自己と認識した際に生じ,誤認対象だった内縁の妻との関係性が自傷行為を抑制したと解釈できた。憎悪感情や自傷行為は,麻痺肢の自他帰属感および誤認対象が影響する可能性がある。

招聘講演:PPA Subtypes and Accompanying Behavioral & Psychological Symptoms of Dementia
  • Yu-Wen Cheng, Pedro Pinheiro-Chagas, Maria Luisa Gorno-Tempini, Boon L ...
    2025 年45 巻3 号 p. 159-175
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/25
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    Primary progressive aphasia (PPA) offers a unique lens into understanding the neural organization of speech and language and the disease mechanisms of neurodegeneration. This article reflects on how the study of PPA―through its three canonical clinical variants:semantic, logopenic, and non-fluent/agrammatic―has transformed our understanding of speech and language networks, clinical-pathological correlations, and disease trajectories and vulnerabilities. Drawing from two decades of multidisciplinary clinical research across Europe, Asia, and the United States, we explored how large-scale PPA studies have revealed the complex brain networks involved in speech and language processing and shown that distinct molecular pathologies exhibit selective affinity towards these networks in variant-specific manners. We also expounded how language typology and neurodevelopmental trajectories critically shape disease manifestations, highlighting the need for linguistically tailored and multidimensional clinical care strategies that incorporate precision diagnosis tools, biomarker-driven diagnostics, speech rehabilitation, and emerging molecular based disease-modifying therapies. This perspective article advocates for ongoing international and cross-linguistic collaborations to refine diagnostic criteria and improve care for individuals with PPA worldwide, regardless of language and neurodevelopmental backgrounds.

ミニレクチャー:いまさら聞けない認知症の諸症状
  • 近藤 正樹
    2025 年45 巻3 号 p. 176-181
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/25
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    本稿では「手づかみで食べるのは失行のため?」という質問に答え,手づかみで食べる行為について考察した。手づかみで食べる患者ができていること,できていないことを整理すると,食べ物を見て確認し,手が食べ物に到達し,把持することはできている。できていないことは道具の使用で,道具の代わりに食べ物をつかんでしまう。できていないことの病態機序としてはいくつかの可能性が考えられるが,4つの病態機序仮説を提案した。1つ目は,道具使用ができないことからの混乱,道具の代償手段としての手の使用が考えられる。2つ目は,道具使用は可能だが,脱抑制や行動規範の障害により直接食べ物に向かうこともありうる。3つ目は,食事時の道具の逸脱や手の道具化としてとらえることも可能かもしれない。4つ目は,脳変性に伴う発達の逆行が考えられる。このような仮説をもとに個々の患者の背景疾患,併存症候と合わせて考える必要があると思われる。

  • 佐藤 睦子
    2025 年45 巻3 号 p. 182-187
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/25
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    神経変性疾患によって認知症ではなく失語症を呈することがある。神経変性疾患による失語症と判断するには,少なくとも,全般的認知機能の低下が認められず主たる症状は言語症状であること,緩やかな発症であること,脳画像などによって血管障害や腫瘍など他の疾患が除外されることなどが条件である。神経変性疾患によって発語失行,再帰性発話,錯語を呈した症例を提示し,神経変性疾患による失語症について論じた。

  • 永井 知代子
    2025 年45 巻3 号 p. 188-194
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/25
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    携帯電話をテレビリモコンのように使う行動は失認のためなのかどうかについて考察した。①携帯電話に対して探索行動を行ったあとテレビに向けた場合:多様式失認の可能性はある。携帯電話の呼称ができるか,使い方や意味を説明できるかを調べるのがよい。②探索せず,携帯電話を手にとってすぐにテレビに向けた場合:注意障害や抑制障害が考えられる。リモコンに形状の似た携帯電話に誘発されて,慣習的動作が脱抑制的に出現したと考えるのが,認知症患者の症状としてはもっとも可能性が高い。さまざまな症状が何なのかを考えるには,DSM-5の6つの認知領域のどれがかかわるかを考えるのがよい。失認は知覚-運動の領域の障害であるが,認知症では通常複数の領域が障害され,失認単独で出現することは稀である。道具の認知という点では,観念性失行の可能性についても考慮する必要がある。

  • 鈴木 則夫
    2025 年45 巻3 号 p. 195-201
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/09/25
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    時計描画の誤り方に基づいて正常群,構成障害群,概念障害群,構成・概念障害群の4群に分類した。各群と認知機能障害の重症度の関係から,誤り方における構成障害要因と概念障害要因はある程度独立して始まり,認知症の進行にともなって,両者が合併していくことが示唆された。針の誤り,数字表記の誤りの出現および進行から60進法,12進法の順で概念が喪失していくことが考えられた。時計描画の重篤な障害を示す時期に時計の読みの障害も出現すると考えられ,描画における誤り方と同様の読み誤り方がみられた。

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