2026 年 46 巻 3 号 p. 151-171
背景:日本語の文字言語は,伝来した漢字を従来の中国語の意味と日本語の音声言語を対応させ,さらに中国語の文章を日本語として読むために日本語の音節に対応した仮名を生み出した。そのため日本語話者の失語症患者では各文字特徴を活かした訓練が成され,そのなかで仮名は音節と1対1対応であるため音韻障害に対する訓練に活用される。今回は仮名と音節の対応が障害され仮名を用いた音韻訓練が困難な伝導失語例に対する漢字を活用した訓練経過を報告する。
症例提示:患者は64歳,右利き男性,左中・下前頭回後部と縁上回の出血性梗塞後に伝導失語を呈した。仮名と音韻の対応が不良で,仮名を活用した音韻障害に対する訓練はできなかった。そこで仮名の読み(音韻)に対応する漢字を用いて,仮名と音韻の対応を定着させた。
考察:表語文字である漢字を表音文字の仮名の音韻に対応させることで,音韻障害に対する訓練として漢字が活用できる可能性を示唆した。