2016 年 2016 巻 26 号 p. 518-528
近年,宮崎によるいくつかのアニメーション映画作品に裏返し構造が使用されていることが確認された.アニメ版『風の谷のナウシカ』は,合計6対の対応を持つ裏返し構造からなる[1].本稿では,宮崎駿がアニメーション映画を創作する際に駆使した表現技法を明らかにすることを目的とし,[1]で示されたアニメ版『風の谷のナウシカ』の裏返し構造に関する知見に基づき,アニメ版の原作に相当する漫画版『風の谷のナウシカ』との対比を行った.その結果,アニメ版の裏返し構造は,漫画版がアニメ化される際に生成されたものであることが確認できた.