人間生活文化研究
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原著論文
摘出マウス心筋の筋小胞体へのCa2+取込と筋弛緩に対するエラグ酸の促進作用
行方 衣由紀日色 啓仁金江 春奈吉野 彩子風間 章寛濵口 正悟田中 直子田中 光
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2018 年 2018 巻 28 号 p. 701-707

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抄録

野菜や果物に含まれる植物化学物質であるellagic acid(エラグ酸)がマウス摘出心室筋の筋小胞体へのCa2+取込と筋収縮に与える影響を検討した。Ca2+感受性蛍光プローブを取込ませた単離心室筋細胞において、アドレナリンβ 受容体作動薬のisoprenaline は非興奮状態での蛍光強度比を低下させた。この低下はアドレナリンβ受容体遮断薬のpropranolol および筋小胞体Ca2+-ATPase 阻害薬のcyclopiazonic acid により著明に抑制された。Ellagic acid は非興奮状態での蛍光強度比を低下させた。この低下はcyclopiazonic acid により完全に抑制されたが、propranolol によっては影響されなかった。摘出心室筋組織標本において、isoprenaline は収縮力を増大させ、弛緩時間を短縮した。強心配糖体のouabain は、収縮力を増大させたが、弛緩時間に影響を与えなかった。Ellagic acid は、弛緩時間を短縮したが、収縮力は変化させなかった。Cyclopiazonic acid 存在下では、ellagic acid の作用は消失した。摘出右心房標本において、isoprenaline は拍動数を上昇させたが、ellagic acid は拍動数に影響しなかった。Ellagic acid は、心筋の筋小胞体へのCa2+取込や筋弛緩を促進する一方、心筋収縮力や拍動数には影響しないことが判明した。心筋に対して従来の強心薬と異なる作用様式を有するEllagic acid は、心筋の長期的機能維持に有用である可能性がある。

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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