2020 年 2020 巻 30 号 p. 103-121
本稿では,高等部設置がなく,「就労」に直接結びつく進路指導の機会が少ない小・中学部からなる知的障害特別支援学校教員を対象とし,キャリア教育における子どもに必要な能力と教員の学校組織・体制上の課題意識との関連等をアンケート調査(自由記述も含む)による統計結果から考察した.また,これらの統計結果を踏まえ,年間に渡り校内で取り組んだキャリア発達表を活用した授業づくり・授業改善の取組等の成果や課題を明らかにすることを目的とした.取組の当初には,多くの教員は就労に向けた指導の必要性を感じ,子どもの発達段階に応じて就労に結びつける具体的な学習内容が明確でなかった.しかし,年間の取組を通して,日々の授業において,教員が子どもに選択させたり,見通しをもたせて活動させたりする学習内容の機会が増えた.一方で,課題解決能力の育成の弱さが示唆され,教育課程上の明確化が課題にあげられた.