日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
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総説
Ph-like ALLの分子病態,診断,治療の展望
佐々木 謙介前田 高宏
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2021 年 10 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

 Philadelphia chromosome-like(BCR-ABL1-like)acute lymphoblastic leukemia(Ph-like ALL)は,Ph染色体が陰性にも関わらず,Ph陽性ALLに遺伝子発現パターンの類似した非常に予後不良なB細胞性ALL(B-ALL)の新たなサブタイプである。Ph-like ALLでは,キナーゼやサイトカインレセプターシグナルの活性化に関連した遺伝子異常を認め,その活性化するシグナル経路によって1)JAK/STAT関連,2)ABL関連,3)その他に分類される。活性化したシグナルをターゲットとしたJAK阻害薬やtyrosine kinase inhibitor(TKI)などの分子標的薬の効果が期待されており,JAK/STAT関連の遺伝子異常に対してはRuxolitinib,ABL関連にはDasatinibを使用した臨床試験がアメリカではすでに行われている。しかしながら,Ph-like ALLの診断方法や治療法は未だ確立されておらず,Ph-like ALLの予後改善は今後の課題である。

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© 2021 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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