抄録
血液腫瘍の治療として,造血細胞移植は日本では年間約5,000人の患者に実施されている。この数は,治療法や支持療法が拡大し,高齢者への移植が可能となったことで増加傾向にあり生存率も高くなっている。このような中で,移植治療の効果を生存や合併症だけでなく生活の質(以下,QOL)でも明らかにしようとする研究が多く取り組まれている。治療後のQOLの回復には数年を要し,身体的,社会的,役割機能,認知機能,疲労,金銭的問題などの問題がみられる。それは,患者QOLは支える人たちにも様々な影響をもたらす。看護支援を行ううえでは,移植患者のパートナーのうつ発生率が健康集団の3.5倍と高いことや,ドナーが幹細胞提供に対して肯定的な感情だけでなく不安や責任感という複雑な感情を持つということも忘れてはならない。このような情報を踏まえて,患者や支える人達の問題を敏感に捉え,ニーズに対応しながら,対処をともに考える支援が,患者や患者を支える人たちが自身での対処を見出すことに繋がると考える。