抄録
【背景・方法】 同種造血幹細胞移植における偏性嫌気性菌血流感染症(ABI)は頻度が低いものの致死率が高い。しかしその報告は少なく,2001年1月から2013年10月に当院移植科で実施した同種移植後1年以内のABIの特徴について後方視的に検討した。【結果】 981件の移植のうち23件(好中球生着前14件,生着後9件)から23株の偏性嫌気性菌を検出した。生着前はFusobacterium sp.やPorphyromonas sp.など口腔内/上部消化管由来(8件),生着後はBacteroides sp.など下部消化管由来と考えられる嫌気性菌の検出頻度(7件)が高く,下部消化管由来疑いのABIでは複数菌検出の頻度が有意に高かった。【結論】 同種移植後のABIの特徴は,生着前後で異なる可能性が示唆され,移植後感染症の初期治療開始時の抗菌薬選択において有用な情報であると考えられた。