抄録
ヒト白血球抗原(HLA)適合血縁ドナーを有する第1寛解期成人急性リンパ性白血病患者の至適治療について,第1寛解期での化学療法継続か同種移植施行かを無作為化比較試験で検討することは難しい。そこでわれわれは臨床決断分析を行った。化学療法を継続した場合のその後の移行確率は日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)の前向き研究の結果に基づき,同種造血幹細胞移植施行後の移行確率は日本造血細胞移植学会(JSHCT)の移植登録一元管理プログラム(TRUMP)データに基づいて算出した。この結果HLA適合血縁ドナーを有する場合,第一寛解期での移植の決断が推奨されるという結論が導き出された。それと同時に化学療法と移植についての大規模データを組み合わせて行う臨床研究の有用性を示すことができた。今後は化学療法と移植両者のデータの一層の充実や紐付け強化を図り,両者のデータを組み合わせた臨床研究が造血器疾患治療の新たな知見につながっていくことを期待したい。