抄録
造血幹細胞移植(HSCT)は移植片対宿主病(GVHD)をはじめとする重篤な移植関連合併症を起こしうる。急性GVHDは,移植後のドナー由来T細胞が重要な役割を果たすが,その明確なメカニズムは不明なままである。しかし,内皮細胞機能がその病態発症にかかわっている可能性が指摘されている。同種HSCTを受けた312人の患者を解析した結果,急性GVHDを起こした患者では,内皮細胞活性化マーカーであるsVCAM-1・sE-selectin・PAI-1・マイクロパーティクルの有意な増加が観察された。また,rTMを受けた患者は,急性GVHD頻度が低く,内皮細胞活性化マーカー上昇が軽度であった。これらの結果は内皮細胞活性化が急性GVHDに関連していることを示唆し,rTMの使用が内皮細胞活性化や急性GVHDの予防のために有効な治療戦略となる可能性を秘めている。