日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
総説
造血幹細胞移植で抗菌薬を使いながらも免疫を維持する腸内細菌叢を守れるか
今滝 修久保 博之植村 麻希子門脇 則光
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2019 年 8 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

 造血幹細胞移植では,血球減少期の感染対策として抗菌薬の予防内服を行う。これは移植中の重症感染症を予防し,予後を改善することが知られている一方で,抗菌薬投与による腸内細菌叢の攪乱が,移植後GVHDの発症や悪化を誘発するとの知見が最近得られている。2018年になってScienceに連続して掲載された3研究(trilogy)では,担がんマウスにおいて抗PD-1抗体の効果が腸内細菌叢の異同で異なることが示された。有意と考えられた腸内細菌種を接種するという介入の結果,抗PD-1抗体による抗腫瘍効果が改善することが示されている。しかしこのtrilogyで同定された免疫療法効果促進細菌種は同一でなく,免疫療法を改善するための画一的なチャンピオン細菌種が発見された訳ではない。そこで健常人の腸内細菌叢をそのまま移植する糞便移植が開発された訳であるが,この糞便移植で移植されているのは細菌叢によって発揮される 「腸内細菌機能」 であることを見逃してはならないだろう。

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© 2019 一般社団法人 日本造血細胞移植学会
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