2019 年 8 巻 1 号 p. 28-35
移植片対宿主病は,移植患者の予後を規定する主要な合併症の1つである。前処置や感染症などによる組織障害が炎症性サイトカインの放出を惹起する自然免疫相とドナー由来リンパ球の免疫応答がホストの組織障害を引き起こす獲得免疫相の連関を病態基盤として発症する。この急性期の免疫シークエンスの諸相を抑制する様々な免疫調節細胞群の役割についても制御性T細胞を中心に知見の集積が進んできた。本稿では,自然免疫と獲得免疫を繋ぐユニークな免疫調節細胞であるNKT細胞の働きについて述べ,この細胞の特徴を活かした移植後早期からの新しい免疫寛容導入法の開発について紹介する。