2020 年 9 巻 1 号 p. 32-39
造血幹細胞移植の前処置では,催吐性リスクの高い抗癌薬が投与されるため,制吐薬としてaprepitantが積極的に使用される。移植前処置で投与されたaprepitantの影響下で,移植day −1よりtacrolimusが開始されるが,aprepitantはCYP3A4阻害作用を有することからCYP3A4で代謝されるtacrolimusの血中濃度への影響が懸念される。移植前処置にaprepitantが投与された患者群25名および非投与群32名に分類し,移植day 0からday 4における体重あたりのtacrolimusの血中濃度と投与量比〔C/D比(ng・kg/mL・mg)〕の推移を比較した。移植day 0におけるtacrolimusのC/D比の平均値は,移植day −1にaprepitantの投与が終了した患者群および非投与群でそれぞれ553±161および414±138ng・kg/mL・mgであり,aprepitant投与患者で有意に高かった。tacrolimusに対するaprepitantの薬力学的影響は,aprepitantの投与終了後から1日間が特に顕著であるため,tacrolimusの血中濃度モニタリングによる評価が重要であると考えられた。