2020 年 9 巻 2 号 p. 60-64
症例は左上縦隔原発,骨転移の神経芽腫の2歳女児。化学療法後にbusulfan,melphalanを用いた大量化学療法を行い,自家末梢血幹細胞移植を施行した。day 61に易疲労感,低酸素血症を主訴として肺高血圧症を発症した。Day 91には貧血,破砕赤血球の出現,血小板減少,血清クレアチニン上昇があり,移植関連血栓性微小血管症(TA-TMA)と診断した。肺高血圧症も悪化がみられ,心臓カテーテル検査で肺動脈性肺高血圧(PAH)と診断した。水分管理でTA-TMAは改善し,PAHは酸素療法で治療開始した。day 131に肺高血圧クライシスから心停止を来した。集学的治療により救命し得たが,神経学的後遺症を残した。PAHは,sildenafil,bosentanを開始し,改善した。PAH,TA-TMAはいずれも血管内皮障害に起因する造血幹細胞移植後の重篤な合併症であり,移植後にPAHを発症した症例においてはTMAの所見が出ないか注意してフォローアップする必要がある。