2008 年 17 巻 p. 63-72
教育における精神分析の影響。その問題を学説史に即して考察した論考(下司論文)を手掛かりに、まず、精神分析の「科学化」を媒介とした教育との接続を確認し、次に、フロイト精神分析に遡って「科学化される以前」の姿を確認し、そこから何が変質したのか、その転換を確認する。その上で、こうした問いの立て方とはまったく別に、フロイト精神分析それ自身のうちに「教育学的含意」を探る可能性に言及し、その作業は「教育」概念そのものを新たに規定する作業とワンセットになっていることを論じた。同時に、そうした考察を通して、「精神分析の影響」という問いの立て方が、罠にもなれば、議論を活性化する起爆剤ともなることを示した。