近代教育フォーラム
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主体と身体 : 何が変容、脱落、透明化したのか(司会論文,近代日本における倫理的主体の形成と身体観の変容,フォーラム1)
樋口 聡
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2009 年 18 巻 p. 15-24

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抄録

鈴木康史氏のフォーラム報告論文は、明治期日本の思想家を取り上げ、近代的人間を表象する用語、例えばpersonという英語に対する訳語が「身」からいかにして「人格」へと変容したのか、そして「身」がいかにして「精神的なるもの」に取って代わられたのか、といった問題を考察し、そこに「主体」の表象の変容を見ようとするものである。その変容とは、「主体」から身体的な領域が抜け落ちていくことであり、さらに「人格」の観念の登場とともに「身体」は徹底的に無化され、透明化する身体へと帰結した、と鈴木氏は考える。主体が変容し、身体が脱落し、そして身体が透明化した、というのである。本稿では、鈴木氏の問題提起の面白さを受けとめつつ、主体から身体が脱落するという図式的な見方がはらむ問題点を指摘した。

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