2012 年 21 巻 p. 149-159
教育の共同性とは何か、という問いをめぐる小国、山名、生澤の三人の議論を踏まえながら、旧来の共同体の概念を超える共同性の概念を探究している。まず、共同性を利害関心・情感心情といった<近しさ>を核とする「内なる共同性」と、規範・契約といった<合意>を核とする「外なる共同性」にわけ、次に、サンデル/ロールズの議論を踏まえつつ、「外なる共同性」が「内なる共同性」を前提としていることを確認する。そののち、「内なる共同性」の核である<近しさ>の基層に、ケアリングに通じる「無条件の気遣い」を見出し、その営みを「実存への篤信」「篤信的関係性」「倫理感情」といった概念で敷衍するとともに、この「無条件の気遣い」が教育実践における相互活動全般における基本的に存立条件ではないか、つまり教育の共同性の基層ではないか、と論じている。