2015 年 24 巻 p. 1-9
現代アメリカの学力向上政策は、1990年頃を境に「ハイステイクス・テスト」「タフ・テスト」と呼ばれる学力テストの結果に基づく教育アカウンタビリティ政策の具現化を特徴とする。M.フーコーは、「規律・訓練のすべての装置のなかでは試験が高度に儀式化される」(フーコー,1977: 188)として、試験が生徒を規格化し、資格付与し、分類し、処罰を可能とする監視装置となることを指摘したが、今や学力テストは児童・生徒を評価・監視するだけではない。学区・学校・教師をも評価・監視する装置へと変貌している。本論文で指摘する学力テストの「暴力性(violence)」とは、学力テストの実施と結果を利用した「抑圧」「統制」「管理」という「権力性(gewalt)」を意味するものであり、それは連邦政府や州政府によってもたらされた全ての児童・生徒、学区・学校・教員に対する脅威となるものである。