近代教育フォーラム
Online ISSN : 2423-8570
Print ISSN : 0919-6560
ISSN-L : 0919-6560
教育勅語は道徳教育の「源流」たり得たのか : 研究動向の整理と課題(報告論文,シンポジウム1 社会の構想と道徳教育の思想-源流から未来を展望する-)
貝塚 茂樹
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 24 巻 p. 56-64

詳細
抄録

日本教育史においては、教育勅語が近代教育における道徳教育の理念の中核であり、「源流」であることが自明のこととされてきた。しかし、教育勅語の評価は、近代教育を通じて決して「安定」していたわけではなく、国民道徳論や「日本的教育論」などの影響の中で、確固たる有効性を持ち得ていたわけではなかった。この点の歴史的分析を欠いた戦後の教育史研究は、教育勅語の歴史的定位を明確にすることに成功しておらず、同時にそれが道徳教育研究を妨げる要因ともなってきた。道徳教育をめぐる議論を学問的な研究対象とするためには、教育勅語を歴史研究の中に実証的に位置付ける努力が求められる。それは、道徳の「教科化」の本質的な意義と可能性を理解するためにも不可欠である。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top