近代教育フォーラム
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教育思想史におけるポストコロニアルの視点(第IV部 「教育」の彼方へ?: 思想史のなかの「学ぶ」「教える」)
小玉 重夫
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2010 年 Suppl 巻 p. 153-161

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抄録

支配者-被支配者、開発者-被開発者、援助者-被援助者といった二項対立図式を組みかえ、異質なものの間の葛藤を含んだ関係を追究しようというポストコロニアルの視点は、教育関係を批判的に組みかえていくうえでも重要な手がかりを提供する。そうした視点の出発点にあるのは、学ぶ側の主体性を重んじる思想が「子ども中心主義」の名の下に子どもの他者性を隠蔽、収奪してきたことへの批判である。しかし他方で、こうしたポストコロニアルな他者性への着目に対しては、他者を了解不可能なものとしてシニカルに神秘化し他者への呪縛を増幅してしまうことになるのではないかという疑念も指摘されている。そうしたシニシズムを回避しつつ、ポストコロニアルの視点を徹底させるための一つの条件は、他者に対して応答する側、教育を行う側の主体の明証性を問い直し、それを脱中心化することである。

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