全国の新規学卒者,特に中卒者を対象とする広域的職業紹介制度,就職列車などによる「計画輸送」は,戦後日本における労働市場統合の制度化における中核をなした。ここでは広域的職業紹介制度と計画輸送をあわせて「集団就職」と呼んでおく。集団就職に関する研究は近年進められつつあるが,ローカル労働市場それぞれの動向を把握し,全国レベルに統合されていく過程については不明なままである。本発表では,「1954年青森発,戦後最初の就職列車」という「神話」化された話を手がかりに,同時期の青森県,ひいては労働力供給地域の在り方を把握し,一方ではこの「神話」について詳細に検討するとともに,戦後日本における労働市場統合がローカルレベルの諸主体によって進められていった過程を明らかにする。