抄録
本研究の目的は,京都府南部地域を事例に選び,業態別に見た大型店の立地展開とその出店過程についても,大規模小売店舗法の運用をはさんで比較する点にある. 京都府南部地域における大型店の立地は1970年代から始まった.当初は,スーパーが中心であったが,大店法の運用が緩和された1990年代以降になると,スーパーの他,専門店,ホームセンターの立地も増え,業態が多様化している. 大型店の出店過程については,八幡市と久世郡久御山町で比較を試みた.八幡市では,1961年以降,旧八幡町に小売市場が立地しており,1970年代後半まで地域住民に対する食料品の供給先であった.八幡市への大型店出店は,1974年頃から具体化され,地元小売業関係者との調整を経て,1983年,マイカルを核店舗とする「八幡サティ」が開店した.同店のテナント入居に際しては地元小売業者が優先された.これは大店法による出店調整の厳しさを反映する.久御山町では,1999年と2000年に相次いで大型ショッピングセンターが開業した.それらは,イオンを核店舗とする「ジャスコ久御山店」と専門店主体の「ロックタウン久御山」からなる.両店共に,テナントに占める地元の割合は,元々久御山町における小売店舗数が少ないためにきわめて低い.両店舗の立地は,自動車交通のアクセスに恵まれた地域特性を反映し,久御山町の小売吸引力を大きく高める一因となった.