人文地理学会大会 研究発表要旨
2003年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 410
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栃木県旧上都賀郡南摩村における地方財政の時空間的変化
*香川 雄一
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抄録
現在、平成の市町村合併と関連して地方財政の諸問題が注目されている。そもそも明治および昭和の大合併においても地方団体の財政運営の効率化が課題となっていた。歴史的な地方財政史研究では地方財政制度の確立と変遷が説明された上で、都道府県や市町村といった個別の具体的な地方財政分析へと進んでいる。その際、地方財政の特徴を国家財政からの相対的な特徴として捉えるだけでなく地域的特徴に基づいた財政分析が必要となる。近年、地理学においても財政資料を用いた研究が報告されるようになってきた。現時点での地方財政の諸問題に対しては、資料的の利用条件もさることながら、地方財政という問題への共通理解が可能である。今後は過去の歴史的な地方財政の問題に対しても地理学的な研究がいかに貢献できるかを検討してみるべきである。地方財政研究の資料として各年度の歳入歳出決算書が用いられるが、実際には合併などのため決算書自体が残っている市町村は意外と少ない。栃木県鹿沼市では市史編さん事業の一環として市議会に保管されている行政文書から合併以前の旧町村を含む決算書を収集してきた。その成果として鹿沼町の決算書を翻刻する(『鹿沼市史 資料編 近現代1(別冊)』2000年)とともに財政史的な検討を加えた(香川:2002=鹿沼市史紀要第7号、同:2003=同上第8号)。また県や郡に対して町村の財政的変化がいかなる特徴をもつかを報告した(香川:印刷中=奥田晴樹編『日本近代史概説』弘文堂)。これらを踏まえ一地域における財政史の概略を紹介した後に、財政の時空間的変化において地理学的理解の方法を示す。対象地域は栃木県旧上都賀郡南摩村である。市制町村制の施行によって村が成立した明治22年から昭和の大合併によって鹿沼市に編入されるまでの約60年間の財政変化を扱う。
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