抄録
本研究は、インターネットの普及過程と利用形態にみられる地域的特徴を明らかにするために、市区町村単位での普及状況と人口構成との関連性、ならびに個人・世帯レベルでの採用過程と利用状況について、横浜市青葉区を主たる対象地域として分析を行った。まず、インターネットの地域的普及状況をみるために、東京圏の市区町村別利用率を分析したところ、都心部から西南部ならびに神奈川東部にかけて高く、それと人口構成との関連性をみると、年齢、職業、学歴との間で有意な相関がみられた。こうした地域的傾向を個人レベルで詳しく検討するために、普及率の高い横浜市青葉区を対象にしてアンケート調査を実施し、個人単位でみたインターネットの採用過程と利用状況を分析した。その結果、青葉区ではインターネットの普及に対する世帯構成員やCATV事業者の役割が大きいことが明らかになった。また、採用時期や接続形態によって、インターネット導入のきっかけや利用形態に違いがあることも判明した。とくに、青葉区ではもともとITに関心が高い中高年の男性世帯主が中心となって、世帯内でのPCとインターネット利用を促進する指導的な役割を果たしていた。これに対し、携帯電話によるインターネット利用者は、比較的新しい採用者に多く、おもに女性が電話の代替機能として電子メールに利用している点が特徴的である。このように、インターネットの普及には個人属性だけでなく、それを促進する社会的環境が大きな役割を果たしている。