抄録
近年のインキュベータ施設の動向として、立地点・運営機関の小規模化がみられる。本報告では、岐阜県羽島市に開設された「ワークショップ岐阜羽島」を事例として、その設立・運営における現状と課題を明らかにした。岐阜羽島駅の駅南地区は、繊維産業の問屋街として開発されたが、1980年代以降の不況で衰退し空きビルが目立つ。羽島市は、市内の産業支援と駅南地区の再開発を目的として、インキュベータ施設であるワークショップ岐阜羽島を2002年に開設した。ワークショップ岐阜羽島は、当初の予想以上に成功している。その理由は、特殊な立地条件の利用と入居企業の意図的な選択にある。駅南地区は、都市圏外への移動に便利な反面、都市圏内への移動には不便であり、そのため産業が立地せず地価が下落していた。こうした立地条件に対応した企業にとって駅南地区は魅力的な立地条件であり、ワークショップ岐阜羽島はそれを対外的にアピールする役割を果たした。また、羽島市はワークショップ岐阜羽島の入居企業を募集する際、特定の企業に入居を依頼し、入居企業を意図的に選択した。これはレベルの高い企業を入居させると同時に、入居企業間での取引・支援関係を想定したためである。これらの理由が、ワークショップ岐阜羽島の予想外の成功を導いた。