人文地理学会大会 研究発表要旨
2009年 人文地理学会大会
セッションID: 201
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第2会場
三重県志摩半島における漁村の分析と地域類型
―『漁業センサス』をもとに―
*高木 秀和
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抄録

1 目的と方法
 本発表の目的は、三重県志摩市(旧志摩郡)域のなかにある漁村を、各年次『漁業センサス』所載の統計データをベースに整理したのち、漁法の多様性とそれを支える条件を農業との関連性にも留意しつつ分析を行い、地域区分と地域類型を試みることにある。
 これまで行われてきた研究は漁業動向や経営主体などの概念的把握が中心であり、近年では「漁業センサス」などの基本的な統計資料を用いた志摩半島の地域分析は行われていない。そこで本発表では、詳細な地域調査を行うための基礎的な作業として、近年の志摩半島の漁村の変化と動向を知るために漁法の多様性にも注意を払いながら「漁業センサス」や「世界農林業センサス」に掲載のデータを用いて整理を行い、その結果から漁村の分析と地域区分(注1)および地域類型を行うことにする。

2 結論
 熊野灘に面した志摩町の全集落と大王町船越、波切、浜島では漁業に関するほぼ全ての指標に関して順位は高く、志摩漁村のなかでも漁業の中心地域であるといえる。そのなかでも志摩町和具と浜島は中心的存在ではあるが、浜島では漁業経営体数が大きく減少したうえ、大規模な沖合遠洋漁船もなくなり、真珠養殖の経営体数数も多くないことなどから、和具・浜島という二本柱から和具に一本化したといえる。また、熊野灘に面したこれらの集落では農業のウエイトは全体的に低いといえるが、志摩町越賀のみ例外的に高い。これらの集落に準ずるものとして阿児町安乗や磯部町的矢がある。
 また、英虞湾に面する阿児町立神、神明、鵜方では漁法の多様性はないものの志摩漁村のなかで真珠養殖に特化した地域であり、それによる漁獲金額も増大している。農業に関してはさほどウエイトが高いとはいえないが、熊野灘に面した漁業の中心地域よりは高い。
 その他の地域は漁業のウエイトより農業のウエイトが高いといえるが、浜島町迫子や磯部町飯浜、阿児町の表海に面した集落などは、若干漁業のウエイトが高い時期もあったが近年では漁業は停滞している。このような表海に面した地域以外の集落は、少なくとも今回の分析で用いた1968年以降は漁業のウエイトは低く、とくに浜島と迫子を除く浜島町や磯部町の的矢湾奥(伊雑浦)沿岸の集落では漁村というより農村と言ってもよいほどである。
 以上、大きく志摩漁村を地域区分すると、漁業の中心地であるが農業はあまりさかんではない熊野灘に面した地域、そのなかでも農業のウエイトがやや高い地域、真珠養殖に特化した地域、漁業と農業のウエイトを比較すると農業のウエイトが高くなる地域の4タイプに分けることができる。
 なお、地域類型の結果は、当日発表したい。

【注】 (注1) 高木秀和(2009)、「三重県志摩市における漁村の分析と地域区分」、愛知論叢87、93-122頁、愛知大学大学院。

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